単音への翼
覚えず見過ごしてきた
母のうちの満たされなさを見る
「いったい誰が助けてくれるの!」
その叫びは
助けの来ない恐れに
恐らく何度も苛まれた
苦しみの記憶数多が
まるで立ち現れる繰り返しの
握りしめたレコーダー音
母自身の気付かぬうち
抱え込み手放せぬ箱の中
巻いた覚えもないかのように
自動的であるかのように
幾度も奏される哀しき音色
幼き頃より 恐らく
無心のうちに 恐らく
泣き声殺して 恐らく
そんな自身を見て見ぬ振りし
無意識に巻き続けたゼンマイ仕掛け
誰が助けてくれるの?と
声ならぬ声で繰り返し
そう何度も
心塞いで呟きながら
重ねてきた月日連綿
娘は祈るしかできないのか
娘はただ見守るしかないのか
私は何故 娘なのだろう
無力な娘
無力でありながら 祈り 待てるか
母の救われるを信じて
最深の母の 立ち上がるを信じて
娘よ
あなたも娘の母である
自身の仕掛けに気づいているか
己自身の苦しみを超えゆく
転調の単音になれ
転じて旋回し
今一度
安堵の大地臨む翼持て
(photo kazesan)
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