おとなおはなし会

3/5~おとなおはなし会夜の部~では

3月5日おとなおはなし会夜の部のおはなし・・・。

Shinoさんに朗読いただきます「花を奉る」

この詩の中に「涙のしずくに 洗われて 咲きいづるもの」ということばがあります。

そのことばと同じタイトルでの若松英輔氏の著書のなかに「花を奉る」についてお話されている箇所がございますので

少しそちらを紹介させていただきました。

2011年4月、東日本大震災の翌月、石牟礼道子は「花を奉る」と題する詩を書いた。
書いた、というのは正確ではないのかもしれない。この詩がはじめて生みだされたのは、1984年、四半世紀以上前だったからである。

(このあと、熊本県にありますあるお寺が石牟礼道子さんに「表白」を依頼することがかかれてまして
その「表白」の題名が「花を奉るの辞」だったそうです。)

さらに、こう続きます

大震災を受けて、「花を奉る」が新たに書き下ろされたのではなかった。それは彼女のなかに古くからある思いだった。このことを、私たちはもう一度考え直さなくてはならない。大震災は、人間の想像を超えて余りある出来事だった。だが、そうした事象はこれまでもあり、また、これからも起こり得る。このとき、彼女がすでに書いた表白を、詩に変貌させたことは、新たな詩を書くことよりも意味深い。その行為自体は、それを読む者を過ぎ去らない「時」の世界に立ち返ることを促す。

時間は過ぎ去るが、「時」は悠久である。「時」は、けっつして消えゆかない。今の求めに応じていつでもよみがえる。時間は生者の世界において刻まれ、「時」は彼方の世界を流れている

震災の後、「花を奉る」に励まされ、慰められた人は少なくないだろう。

と書かれてます。

この詩「花を奉る」は

朝日新聞のデジタルで読むことができます。

そこの記事の最後に石牟礼道子さんご自身の「花を奉る」についてこのようにインタビューにお応えになってます。

「震災後、がれきの中で小さな野の花が咲いているのをテレビで見ました。折れているのに、下を向いたまま花を咲かせていた。上を向いて咲きたかったろうに。生命とは、こういうものと思って、励まされましてね。花も傷ついている、生傷を全身にうけながら花を咲かせている。それは私たちの心をも表現している。(花から)呼びかけられているとも思いました」


それでは

今夜の朗読
絵本 宇部京子作「はなちゃんの はやあるき はやあるき」


ーあとがきーより

東日本大震災からやがて3年という月日がたったころ、
被災地で右往左往していた私のなかに、ひとりの女の子が生まれました。
「ねえねえ、わたしのこと書いて」その子は愛くるしい目でいいました。
書くことは決まっていました。岩手県の北のほうにある野田村保育所の軌跡的ともいわれた避難のことです。

当時保育所にいて、園長さんと共に戸締りのため最後まで残り、あやうく命をとりとめた義妹から聴いた園児たちのすがた「だれも泣かず、だれもぐずらず、それはそれはりっぱだったんですよ」。その言葉がずうっと頭の中にありました。
あの大きな津波が来ることを誰が想像したでしょう。野田村保育園(園児90名、職員14名)は、津波を想定し毎月地道な避難訓練をしていたのです。それが90名の小さな命を守った。

地球は生きています。生きていれば、どんなこともありましょう。その地球に生かされている幸せを忘れてはいけません。そしてどうか、被災地を、福島を、忘れないでいてください。
この絵本を、未来あるすべての子どもたちに。

そして
最後は
Shinoさんの朗読によります

~花を奉る~  石牟礼道子

春風萌きざすといえども われら人類の劫塵ごうじんいまや累かさなりて

三界いわん方なく昏くらし

まなこを沈めてわずかに日々を忍ぶに なにに誘わるるにや 虚空はるかに 一連の花 まさに咲かんとするを聴く ひとひらの花弁 彼方かなたに身じろぐを まぼろしの如ごとくに視みれば 常世なる仄明かりを 花その懐に抱けり

常世の仄明かりとは あかつきの蓮沼にゆるる蕾つぼみのごとくして 世々の悲願をあらわせり かの一輪を拝受して 寄る辺なき今日こんにちの魂に奉らんとす

花や何 ひとそれぞれの 涙のしずくに洗われて咲きいずるなり

花やまた何 亡き人を偲しのぶよすがを探さんとするに 声に出せぬ胸底の想おもいあり そをとりて花となし み灯あかりにせんとや願う

灯ともらんとして消ゆる言の葉といえども いずれ冥途めいどの風の中にて おのおのひとりゆくときの花あかりなるを この世のえにしといい 無縁ともいう

その境界にありて ただ夢のごとくなるも 花

かえりみれば まなうらにあるものたちの御形おんかたち かりそめの姿なれども おろそかならず

ゆえにわれら この空しきを礼拝す

然しかして空しとは云いわず 現世はいよいよ地獄とやいわん

虚無とやいわん

ただ滅亡の世せまるを待つのみか ここにおいて われらなお 地上にひらく 一輪の花の力を念じて合掌す

二〇一一年四月二十日

ピアノ~花は咲く~


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Gaju。 管理人
Gaju。管理人suzukiです。 管理運営担当しております。 愛猫たち(東風Cochiと南風Kaji)のときの過ごし方から 日々学ぶ今日この頃です・・・。