11月の”Gaju diary”でご紹介させていただいた
腕時計作家のyuriqueさん
昨夜は「おとなおはなし会」読み手でご参加くださいました。
なんといっても
大好きなジャック・プレヴェールの本をご紹介するメッセージが
わかりやすく、さらにその「好き」という思いがとても伝わってきます。
全文どうぞお読みください
そして
彼女の詩の朗読をごゆっくりとご堪能下さいませ。
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今回ご紹介する本はジャックプレベールの「鳥への挨拶」という本です。
ジャックプレベールは1900年生まれの、
詩や脚本などを書いて活躍していたフランスの作家です。
有名なのは映画「天井桟敷の人々」や
シャンソンの「枯葉」でしょうか。
わたしは大人になってから、
2000年頃かと思いますが、
独学でフランス語を学ぼうとしていた時に
フランス語の原詩と訳が両方載った
「フランス名詩選」という本を手にしました。
その中の「鳥の肖像を描くために」を読み
感激して、プレベール作品を集め始めました。
今回はプレベールを紹介したかったので、
いろいろな詩人の載ったその本ではなく、
1冊丸ごとプレベールの詩、
奈良よしともさんの絵、
そして編集と訳がジブリの監督、高畑勲さんという豪華なコラボ詩集を選びました。
わたしは、この本を手に取るまで
ジブリからフランスのアニメが何本も出されているのを「少し不思議」と思っていたのですが、
高畑さんは東大の仏文科を出ていらして、
もう大学生の頃から
プレベールが大変お好きだったようです。
他にも高畑さんのプレベール翻訳本はもう1冊、
そして音楽CD、
あと、ジブリでこの本と同じ2006年に出されたアニメーション「王と鳥」もプレベールの脚本です。
今回の本に高畑さん訳の「鳥の肖像を描くために」も載っていますのでそちらをご紹介いたします。
だけど、本当の本当は、わたしは「金色の老人と喪服の時計」という本が1番好きなのです。
それはプレベールが子供だった頃のことを書いたおはなしなのですが、本人にはほとんど特別な事件などは起こりません。
1906年頃のパリの文化が、
子どもから見た大人たちの様子や
当時の見世物小屋だとか公園の様子などが描かれていて、
今でも残る商品名やパリの建物や公園のあちこちで見られる過去の名残りが、
新しかった頃の姿で生き生きと立ち上がってくるようでとても楽しいのです。
でも、日本では耳慣れない単語が多く、読み聞かせには難しそうだなと思って諦めました。
ただ、そのエッセンスは今回読む詩の中にも少しずつ入っています。
特にあゆみさんに読んでいただく象の詩では当時の日常のフランス文化をふんわりと感じられるかと思います。
また、詩人が得意な言葉遊びみたいな、同じ単語の漢字に違うルビがふってある部分があります。
あゆみさんは書いてあるままルビを読む事にしたようですが
「おとこ」と「蚊」と「俺」は同じで
「ラッパ」は「鼻」の事です。
今ここで聞いても意味がわからないと思いますが
、詩の朗読中に違和感を感じたらそこが言葉遊びなのだなと捉えていただけたらと思います。
なお、今回読む詩は、プレベールの、鮮やかで楽しい、見事な手品のような作品ばかりを選びました。
でもプレベールが生きてきた時代は
戦争や戦後の政治の混乱や革命があったりするので、それに対する皮肉や風刺の作品も多く、作風としては笑えるようでも、とても重い作品もあります。
また、愛についての喜びや悲しみの詩がたくさんあります。
それはそれは本当に素敵なのですが、
わたしは少し照れて読めないので、
ここであゆみさんに読んでいただきましょう。
夜のパリ
三本のマッチ
一本一本点ける
夜のなか
一本目は
きみの顔全体を見るため
二本目は
きみの眼を見るため
最後の一本は
きみの口を見るため
そして真っ暗闇は
それをみんな思い返すため
きみを腕に抱き締めながら
いかがでしょう。
フランス映画の世界そのままですね。
それではこの後も
いくつかのプレベール作品をお聞きください。
プレベールが作り出す世界の根底にある
映画「ノートルダムのせむし男」で
エスメラルダが息を引きとる時のセリフ
「人生は美しい」
をこころのどこかに残していただけますように。
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