小さいころ、キチンと片づいた台所の片隅で、
しちりんの上のお鍋がいつもゴトゴトと音をたてていた。
静かな午後のひととき、香ばしいお醤油、甘酸っぱいお酢・・・・
ときには美味しそうな油の匂いが、せまい家の中にホンノリと漂い
菜箸を持った母が板の間にしゃがんでお鍋をのぞきこんでいた。
決まったおかず(主菜)のほかに、
いつでもちょいとお膳にのせられるようなもの
「常備菜」をこしらえていたのだった。
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常備菜とはつまり、いつでもちょいと役に立つ、
おまけのお惣菜____
ただし、手ぬきをすると、材料が安いものだけに、
誰も見向きもしないという、
悲しい運命になってしまうから
ご用心ご用心。
_常備菜_p215~
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