椿
椿としては大木であろう。その根元に、小首を傾け、
考えに沈んでいるような地蔵があった。
他の地蔵とは一線を画す丁寧な造りに思わず立ち止まり、しばらく見入る。
突然、辺り一面椿の花で埋もれるような情景が浮かんでくる。
禍禍しいほどの鮮やかさであった。
慌てて二度三度、瞬きをする。すぐに元に戻る。
私の今までの椿の記憶から引き出された画だったのだろうか。
しかしあれは明らかにここの風景であった。
兎に角、早春の頃は間違いなくそうである、ということなのだろう。
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