この人に出会った者は、とんでもないものに遭遇してしまったと思う。
強く惹かれるのに、それでいてどうやっても合理で解明できない大きすぎる存在。
それが目の前に立ちはだかる。いくら腕を伸ばして抱えようとしても余るのだ。
~
日は日に
昏るるし
雪ゃあ雪
降ってくるし
ほんにほんに まあ
どこどこ
漂浪きよりますとじゃろ (糸繰りうた)
註がいるだろう「漂浪く」(されく) は
水俣の言葉で魂がさまようことである。
ある種の人々は生まれつきこの性癖を持っている。
そして、この人に出会えたようなとんでもない幸運を水俣の言葉では
「のさり」と言う。天からの恵みの意である。
追悼 石牟礼道子 p181~
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