一日一文 365日

一日一文 249. 茨木のり子「思索の淵にて 詩と哲学のデュオ」より

「今までに読んできた詩のなかで、一番好きな詩を一篇、挙げるとすれば何になりますか?」
という質問を受けることがよくある。そんなとき、ふっと浮かんでくるのは、


年をとる それは青春を
歳月のなかで組織することだ

ポール・エリュアール(大岡信 訳)


という詩である。長詩の一部らしいのだが、そして、ポール・エリュアールというフランスの詩人のこともよくは知らないのだが、若い時に読んで、いまだに記憶に焼きついているのだから、とても好きな二行と言っていいだろう。短いのに、なんという深さを湛えていることか。<組織する>という硬い言葉がここではひどく艶のある使われかたで、たぶん翻訳もいいのだろう。

組織するーー組み立て直すという言葉からは、織物のイメージが浮かんできてしまう。青春とは、だいたいが恥多き季節で、はちゃめちゃな萌芽がわけもわからず炸裂する。

それを縦糸として結び直し、あれはいったい何だったのだろう?何だったのだろう?と思いつつ、横糸を一日一日織りなして、一枚のタペストリーを仕上げてゆくのが人間の生涯なのかもしれない。

ーはじめにーp2


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Gaju。管理人suzukiです。 管理運営担当しております。 愛猫たち(東風Cochiと南風Kaji)のときの過ごし方から 日々学ぶ今日この頃です・・・。