一日一文 365日

一日一文 188. 吉田紋子「遠い日々、降り積もる朝」

一杯の珈琲が与える喜びに価値を見出さず、手元に本を抱えて旅を夢想する事すら夢物語と考えて、向き合う意義さえ冗談のように遠巻きに眺めていた。

それでも新しい日々を求めて手を動かせば、僕を形作る軌道も少しずつ広がり、いつしか世界も鮮やかに変わっていく。

朝食の時間になると珈琲の香りが狭い台所に充満する。

かつて無気力に日々を生きてきた過去の僕に今の自分を伝えても信じる事はないだろうけど、ここより遠く離れた未来の自分なら今の決意に花束を抱えて拍手を贈ってくれるはずだ。

本に珈琲。立ち昇る芳香。
インクの香りに被さる懐かしい思い出の匂い。
かつて様々なことを取り逃していた僕を導く優し香り。

今日もまた香りの向こうに一日が始まる。

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Gaju。 管理人
Gaju。管理人suzukiです。 管理運営担当しております。 愛猫たち(東風Cochiと南風Kaji)のときの過ごし方から 日々学ぶ今日この頃です・・・。