一日一文
むかしむかし あるところに、おうさまが いた。
その おうさまは、ちっとも いばらなかった。
まいにち おきると、おきさきさまに ぺこぺこ、けらいに ぺこぺこ、
にわの くじゃくにも ぺこぺこ。
〜
(ちっともいばらない王さまは、
となりの国がせめてきても、いつものように、ぺこぺこ戦います。)
おうさまは、あたりがしずかになると、ゆっくり とことこ となりのおうさまのまえにゆくと、
ぺこりとあたまをさげて
〈ごくろうさんでさた。おつかれでしたね〉ぺこり、
〈わたしたちも つかれました。
おしょくじを いっしょに しましょう〉といった。
となりのおうさまは
〈えへん〉といって、〈ごちそうになってやろう〉と、
おしろのなかに はいってきた。
そしてみんなで、おおごちそうをたべた。
となりのおうさまは、いばっていった。
〈われわれの へいたいは、ひとりもけがにんが てなかった。
わがくには せんそうが せかいいちうまいのだ〉
おうさまは ぺこりとあたまをさげて
〈ほんとうに よかった〉としずかにいった。
佐野洋子「ぺこぺこ」より
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