「あの子があなたの演奏を聴くまでは待ってください! あなたの演奏を聴いたら、考えを変えるかもしれないと思うのです。それでも、あの子が何も感じなければ・・・」
「あの子は何かを感じると思うよ。きっとコンサートピアニストのために、グランドピアノの調律をしたい、と感じるはずだよ」リップマンは愉快そうに笑いました。ルーベン・ワインストックも声を出して笑いました。「もし、そういうことならば、調律の仕方を教えたほうが良いですね」
「そうすべきだと思うよ、ルーベン。あの子には本物の才能がある」
「そうですね。本当のところ、良くあんなにやれたと思いました。ただ、わたしとしては、やはりあの子にはこれより、もうすこし良い仕事に就いてもらいたかったのです」
「ルーベン、人生で自分の好きなことを仕事にできる以上に幸せなことがあるかい?」リップマンは言いました。
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