一日一文 365日

一日一文 275. 金時鐘「 祈り 金時鐘詩選集」より

ー 夏 -

声をたてず
立てるべき声を
底ぴからせている季節。

思うほどに眼がくらみ
しずかに瞑るしかない
奥底の季節。

誰であるかは口にもせず
ひそと胸にかい抱く
追慕の季節。

願うよりは願いを秘め
待って乾いた
旱の季節。

うすれて記憶が透かされているとき
汗みどろにむれてくる
戦火の季節。

夏は季節の皮切りだ。
いかな色合いも晒してしまう
はじけて白いハレーションの季節だ。

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Gaju。 管理人
Gaju。管理人suzukiです。 管理運営担当しております。 愛猫たち(東風Cochiと南風Kaji)のときの過ごし方から 日々学ぶ今日この頃です・・・。