四五
あのかたの静かな足音を 聞いたことはないのか?
あのかたは来る、ひたひたと いつも来る。
どんな瞬間にも どんな時代にも 夜ごと日ごとに あのかたは来る、ひたひたと いつも来る。
わたしは さまざまな気分で さまざまな歌をうたってきたが、歌の調べは いつとても みんなこのように告げていた
ー あのかたは来る、ひたひたと いつも来る、と。
陽の降りそそぐ四月の花の香る日に、森の径を通って、あのかたは来る、ひたひたと いつも来る。
雨の降りしきる七月の夜の暗闇に、雷鳴とどろく雲の馬車に乗って、あのかたは来る、ひたひたと いつも来る。
悲しみにつぐ悲しみのなかで、わたしの胸に迫り来るのは あのかたの足音、そして、わたしの歓びを燦然とかがやかせるのは
あのかたの御足の金色の感触。
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