一日一文 365日

一日一文 331. 河合隼雄「明恵 夢を生きる」

ふと一匹の黒犬を見る。それが足にまとわりついてくるとき、「この犬を年来飼っていたのだ」と明恵は直覚する。言ってみれば、すべての人はその心の中に黒犬を飼っているのだが、それに気づく人と気づかない人とがいるだけなのである。

明恵が事事無礙の思想を理解したというのではなく、彼の身体存在そのものが、事事無礙の世界を体現したという事実である。

心身共に、己の全存在を懸けて、それを知ることが必要だったのである。

p361-華厳の世界ー より


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