Ayakoさん~お気に入りの一冊お裾分け~
*加藤文子「奏デル盆栽ノート」
お人柄をよくご存じでいらっしゃるからこその素敵なご紹介文
ありがとうございました♡
朗読を控えて聴いていらしたYukakoさんは
この文章を聴いて
頑張って読もう!と思われていたそうです!(^^)!
私の録音ミスで
14:45~消音となってしまいました。
一文はこちらです。
「木ものもカサカサになった葉を取り除きながら、しまいこむ。」
それでは
Ayakoさんご紹介文と共に
再びお聴きいただければと思います(*^-^*)
・
別に教育ママでも厳しい⼈でもなかったけれど、割と世間体を気にするタイプの⺟に、
『礼儀正しくしなさい』『きちんとしていなさい』といつも言われて育ちました。
どこに出ても恥ずかしくないようにという願いと共に、大切に育ててもらった自分のことを、
盆栽みたいに育てられたのと、若干の自虐を込めて⼈に話していた私は、
実はあまり盆栽を好きになれなかったのです。
針金で進むべき方向を決められ、体良く体良く形を整えられて美しく鎮座する植物を見ていると、
もっと自由に生きたかろうに…という切ない気持ちになってしまっていたのです。
きっと少しだけ、自分の育てられ方に窮屈さを感じていたのだと思います。
だから、初めて加藤さんの盆栽を拝見したときに、『これが盆栽なんですか?』と心底驚いたのです。
まるで森の奥深く、⼈目につかない場所でひっそりと生きていた山野草をそのまますくってきたように、
媚びず、おもねらず、あるべき姿のまま器の中に収まっている植物達。
それぞれが自由に枝葉を伸ばしているように見えるのに、美しい器と一体となって、
素晴らしい造形美の作品となっている。
しかもそれが、10 年 20 年という⻑い年⽉、その⼩さな器の中で生命を循環させている。
何もかもが衝撃的だったのです。
盆栽作家の加藤文子さんと、そのご主⼈で陶芸家の⼩沼寛さんご夫妻と知り合って、4 年と少しが経ち
ました。
お会いできるのは年に 1〜2 回程度で、その暮らしの全てを知っている訳ではないけれど、
まるで、自分たちの 1 番心地よいリズムをメトロノームで刻んでいるように、乱れることなく、
平らかで穏やかな日々を送られているのが、メールや電話の声からもいつも伝わってくるのです。
私が建築設計の仕事をしているのもあり、加藤さんとはよく空間の話をします。
『余白』とか、『緊張と弛緩のバランス』の話をします。
以前、都内の狭⼩地、敷地に目一杯建てざるを得なかった住宅に、
せめてほんの少しでも、気持ちや視界の抜けを作れたら…と施した⼩さな仕掛けに、
加藤さんはすぐに気づかれ、何を言わずともその意図と効果を理解して下さり、
それを『神様の通り道』という言葉を使って褒めてくれたことがありました。
そうか…、加藤さんの作品から、お庭やアトリエから、そしてお⼈柄から感じる風通しのよさは、
ご自身が、神様が通る為の余白を大切にされているからなのだな、と、妙に腑に落ちた瞬間でした。
何かと息苦しい世の中だから、みなさんにもそんな風通しの良さを感じてもらえればと思い、
加藤文子さんのエッセイ『奏デル盆栽ノート』を推薦させていただきました。
声なき声に耳を傾け、その意思を尊重し、目の前の命を大切に扱う、加藤さんの土まみれの日常や、
美しい草花の作品、那須の雄大な自然を思い浮かべながら、
ほんの少し、みなさんの呼吸が楽になったらうれしいです。
朗読:Yukakoさん
ピアノ:Suzuki