一日一文
「アブラムシに食べられていた草が香りを発し、その香りを嗅いだテントウムシが、そこにアブラムシがいることを察してやって来た。
目には見えなくても、ああいうことがこの世では起きているのよね。
虫に食われた草が香りを放ち、その香りに誘われてやって来るものもいれば、アブラムシを守ろうと、テントウムシを攻撃するアリもいる」
「生き物は、どんな存在に生まれるか、選ぶことはできない。望む力を持って生まれてくるわけでもない。それでも、それぞれが己の持つ力を活かし、あるときは他者を助け、あるときは他者を害して生きていく。
そういう関係が絶えず続ける網のようにこの世を覆っていて、ちっぽけな虫ですら、それぞれの役割を背負い、その網の目をつくっている。どんな小さな者も己の役割を担って生きている」
上橋菜穂子「香君」下巻p318より
ABOUT ME