十分人世は淋しい。私たちはただそういって済ましている事ができるだろうか。お前たちと私とは、血を味った獣のように、愛を味った。行こう、そしてできるだけ私たちの周囲を淋しさから救うために働こう。私はお前たちを愛した。そして永遠に愛する。それはお前たちから親としての報酬を受けるためにいうのではない。お前たちを愛する事を教えてくれたお前たちに私の要求するものは、ただ私の感謝を受取ってもらいたいという事だけだ。お前たちが一人前に育ち上がった時、私は死んでいるかもしれない。一生懸命に働いているかもしれない。老衰して物の役に立たないようになっているかもしれない。しかしいずれの場合にしろ、お前たちの助けなければならないものは私ではない。
お前たちの若々しい力は既に下り坂に向おうとする私などに煩わされていてはならない。
斃れた親を喰い尽して力を貯える獅子の子のように、力強く勇ましく私を振り捨てて人生に乗り出して行くがいい。
~
よく眠れ。不可思議な時というものの作用にお前たちを打任かしてよく眠れ。そうして明日は昨日よりも大きく賢くなって寝床の中から踊りだして来い。私は私の役目をなし遂げる事に全力を尽すだろう。
~
小さき者よ。不幸なそして同時に幸福なお前たちの父と母との祝福を胸にしめて人の世の旅に登れ。前途は遠い。そして暗い。しかし恐れてはならぬ。恐れない者の前に道は開ける。
行け。勇んで。小さき者よ。
ー 小さき者へ - p23~
ABOUT ME