昼夜、ひとつの思いがついてまわり、じぶんとは
関係ないと思うのに、あたまを離れることがない。
そんなわけだった。墜落したのは楽園からで、
地獄の責苦のまっただなかへ。
この恐ろしい事実に、どうして生き
ながらえたが、ぼくにはわからない。
悲しみと、ひとつだけ契約を結んだ、
受けとめ、向きあって生きようと。
他の場所をたずねて、あたらしい友も得た。
不思議な書物から不思議なことどもを覚え。
四年、五年の歳月がすぎて、もうあの恍惚の日々は、
愉楽の時間は戻らなかったが、
すこしずつ、自由を知り、生きること、
そして、芸術と戯れるすべをおぼえた。
・
「自伝」より 9 p172~
ABOUT ME