落葉
人の耳には ただ
「かさっ・・・」としかひびきませんが
その一言を 忘れる落葉はありません
きん色の秋の空から おりてきて
いま 地面にとどいた
という その一しゅんに
「ただいま・・・」
なのでしょうね それは
長い長い旅のバトンタッチを終えて
ようやっと ふるさとの
わが家の門に たどりつき
ようやっと それだけ言えた
そして たぶん それには
大地のお母さんの
「おかえりなさい・・・」
も重なっているのでしょう
「おつかれさま さぁ 私の胸でゆっくりお休み・・・」
という 思いのこもった
そのうえ ほんとうは それには
宇宙のお父さんの
「さあ 元気に行っておいで・・・」
もまた 重なっているのでしょう
大地に休むということは
明日の生命(いのち)を 育てるための
「土」への 出発なのでしょうから
人の耳には ただ
「かさっ・・・」としかひびきませんが
_Ⅳ 落葉_p135~
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