コーヒーカップ
まだ目覚めない町をながめて
青色の薬缶をコンロに置いた
だれかに命じられたことでは
けっしてないのだけれど
あたたかいコーヒーを飲んで
ようやく わたしの朝
時折、舌をやけどして
慌てて水をふくませる
すべてうまくいくはずはないから
そんなはじまりかたもあるだろう。
うすぐらい町の街灯が
ようやく眠りについて
すこしづつあかるんで
鳥たちが朝をつたえて
やけどした舌を確かめながら
このささいな痛みを知ること
冷めていくカップを手で包み
はじまりがはじまることを
やさしい沈黙のなかで
飲みこんでいく
P3~
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