一日一文 365日

一日一文 81. 金時鐘「金時鐘 詩選集 祈り 」より

ー 喝くー(かわく)

見やる先で
日射しもぎろつく陽炎になり
かげろうになり、
影もちじんで
骨組みだけの庁舎の残骸で
かげろうになり
行き交じった暮らし、人々の歌、
そこでさざめいた青い思想も
すっかり干からびた
太古の荒れ地のかげろうになり
われらの希い、われらの明日、
人知れず涙した瓦礫の涙
くぐもった憤りも炎天でゆらめいて
かげろうになり、
夜空にいつか散り敷いた
思いのたけの時空の彩り
花火。
そう、そして月、
一つ一つ胸に宿った
小さい願いの星。
すべてが済んだ事のあとの
光の棘に祟られてあるもの
昼夜緑の翅をひろげて
閃光にくらんだ底翡の夏をひずませているもの。
またもへめぐって夏が来て
めくるめく光の闇になり
見やる先の
闇になり。

ー 祈り ーp186


ABOUT ME
Gaju。 管理人
Gaju。管理人suzukiです。 管理運営担当しております。 愛猫たち(東風Cochiと南風Kaji)のときの過ごし方から 日々学ぶ今日この頃です・・・。