一日一文 365日

一日一文 115. 池田晶子「14歳からの哲学」より

「生きて」「思う」ということは、彼にも君にも誰にとっても共通している、ものすごく当たり前なことじゃないか。この世の中には、当たり前なことよりも不思議なことは存在しないんだ。君は、自分が生まれて、いろいろ思って、あれこれ生きて、そしてやがて死ぬという当たり前のことを、とんでもなく不思議なことだとは思わないか。そして、これがいったいどういうことなのか、本当のことを、知りたいとは思わないか。

たぶん君も、時々そんなことをちらりと思ったりしているに違いない。そして、その不思議な感じが、自分だけのものなのか、どうもそうとは思えなくて、「ねぇお母さん、どうして私は私なの」なんて訊いてみる。すると、「そんなの当たり前でしょ」なんて冷たく返されて、それ以上訊く気もなくなる。その当たり前こそが、君には不思議でたまらないことなのにね。

そんなことが続けば、何か自分のほうが変なのじゃないか、こんなこと感じるのはいけないことなんじゃないかと思って、その不思議の感じを忘れようと努めるかもしれない。でも、絶対に忘れちゃだめだ。なぜって、その不思議の感じこそが、君がこれから、君の人生にとって最も大事なこと、誰にも正しい本当のことを知るために考える、その最初の最初の鍵穴だからだ。不思議の扉は、これからいくつもいくつも、宇宙の果てまで開いてゆくことができるものなんだ。

ー 考える 3 ー p22~


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Gaju。管理人suzukiです。 管理運営担当しております。 愛猫たち(東風Cochiと南風Kaji)のときの過ごし方から 日々学ぶ今日この頃です・・・。