長い隔離から開放された多くの魂よ、大空に飛んでいけ、今こそ自由を存分にわが物として・・・。
~
塔和子にも、やがて真の自由が迎えに来るだろう。詩という子孫を永い未来に残して旅立つ日まで、高貴な猫のように、より優雅な魂を持ち続けて生きることだろう。
ー 記憶の川で -
忘却という言葉さえ
それは在ったということを消しようのない
証しとなる
生きて暮らしてそれを忘れたい
心のかたすみのくらいところで
そんなことがささやかれるときも
思い出として残る事象の
ずっしりとした手ごたえに圧倒される
人はいつも
忘れたいと願うことや
憶えておきたいと願う記憶の川を下って
流れの元は忘れていない
それを暖める故に
あるとき
ふっと忘れてかるくなりたいと思ったり
折り重なる思い出の上に豊かにいたいと思ったりするのだ
自己の変革を企てても
うまく成し遂げたと
自ら喝采することの出来ないことを
知りつくしている
さびしい生きもの
塔和子「記憶の川」より
ー 終章 生きた証 -p195~
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