一日一文 365日

一日一文 162. 安宅 温「命いとおし 詩人・塔和子の半生」より

長い隔離から開放された多くの魂よ、大空に飛んでいけ、今こそ自由を存分にわが物として・・・。

塔和子にも、やがて真の自由が迎えに来るだろう。詩という子孫を永い未来に残して旅立つ日まで、高貴な猫のように、より優雅な魂を持ち続けて生きることだろう。

ー 記憶の川で -

忘却という言葉さえ
それは在ったということを消しようのない
証しとなる
生きて暮らしてそれを忘れたい
心のかたすみのくらいところで
そんなことがささやかれるときも
思い出として残る事象の
ずっしりとした手ごたえに圧倒される
人はいつも
忘れたいと願うことや
憶えておきたいと願う記憶の川を下って
流れの元は忘れていない
それを暖める故に
あるとき
ふっと忘れてかるくなりたいと思ったり
折り重なる思い出の上に豊かにいたいと思ったりするのだ

自己の変革を企てても
うまく成し遂げたと
自ら喝采することの出来ないことを
知りつくしている
さびしい生きもの

塔和子「記憶の川」より

ー 終章 生きた証 -p195~


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Gaju。 管理人
Gaju。管理人suzukiです。 管理運営担当しております。 愛猫たち(東風Cochiと南風Kaji)のときの過ごし方から 日々学ぶ今日この頃です・・・。