一日一文 365日

一日一文 175. 沢村貞子「寄り添って老後」より

人間、おなかがすいては何にも出来ない。だから、どんなときにも、みんなに美味しいものを食べさせるのが女の仕事。そして、それが母の張り合いだったらしい。

昔、子供たちに何とか美味しいものを・・・と、父から渡されるたしないお金の中で苦労していた母。月末になると牛肉のこまぎれにくず野菜のカレーもどき、お豆腐のおからを油でいためてソースをかけた台抜きのトンカツがよく出てきた。
「どう?おいしいかい?」
そう言いながら私たちの顔をのぞきこむ母はいきいきしていた


狭いお勝手で、しゃがんだり、のびあがったり・・・手伝おうとする家人とぶつかったりしながら、また、ちょいちょい庖丁をにぎることになってしまった。食べやすいように、薄く切って柔らかく煮こんだとりと野菜のいため煮、好みのだしにいろんな味噌をまぜあわせたしじみの味噌汁など。
黙って食べる家人の顔をそっとのぞいて、
「どう?おいしい?」
などと、言ったりしている。

生き甲斐と言うと、なんとなくむずかしいけれどーーー
いまの私を支えてくれるのは、ほんの小さな張り合いである・・・昔の母と同じように。

私はそれを、いつまでも大切にしなければーーーそう思っている。

ー ”張り合い”ということ - p111~


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Gaju。管理人suzukiです。 管理運営担当しております。 愛猫たち(東風Cochiと南風Kaji)のときの過ごし方から 日々学ぶ今日この頃です・・・。