ー 伯母と過ごした週末 - より
門灯が灯る頃、伯母の家の呼び鈴を押すと、木製の扉の格子窓に伯母の姿が現れ、いつも、”いらっしゃい”と小さな声で囁いて、暖かな空間へ招き入れてくれた。
本や雑誌が山積みされた狭い階段を注意深く上ると、台所からその都度違ったレシピの濃密な香りが漂っていた。
食事の支度ができるまで、伯父が遺したクラシックのレコードや、買ってきたロックのレコードを聴いたりしたが、とりわけ伯父のコレクションの中のモーツアルトをかけると、伯父の供養になると喜んだ。この頃のエピソードが詩集『歳月』の中の「モーツアルト」という詩にでてくる。
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