ー 起床 -
蕾が
とどめられず膨張してゆくさまに似て
体の奥の方から
じんわりと
満たされてゆくこころよさを
じいっと受け止める
私はいま
枕の上の咲きたての花だ
ばっちりと目をあけて
在る私にさわる
寝につくまでと
目覚めるまでの空白が
綿の花のようにやわらかくほぐれる
この充実感の中で起き上がる
今日と昨日が
すきまのない線でつながる
それから
私は
もう一枚の皮をぴったりつけるように
下着をつける
ぬけがらをしまつするように
夜具をたたむ
ああ
朝のカーテンの内側は
古い香水瓶のように
かすかに香る
私でいっぱいだ
p846 (1989年9月「青松」)
ABOUT ME