『神秘哲学』は、準備もなく、好奇心だけで手に取った者を容易に受け入れない。それは修道者の前にたちはだかる、幾重にも重なる不可視な門を思わせる。読者は本を開くとすぐに、「親しく経験したことがない人には何人といえども説明することはできない」という一節に出会う。しかし、その一方で、ほとんど個人史を語ることのなかった井筒が、自らの精神遍歴を率直に語ったのも『神秘哲学』だったのである。
第一章 『神秘哲学』詩人哲学者の誕生 p13
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『神秘哲学』は、準備もなく、好奇心だけで手に取った者を容易に受け入れない。それは修道者の前にたちはだかる、幾重にも重なる不可視な門を思わせる。読者は本を開くとすぐに、「親しく経験したことがない人には何人といえども説明することはできない」という一節に出会う。しかし、その一方で、ほとんど個人史を語ることのなかった井筒が、自らの精神遍歴を率直に語ったのも『神秘哲学』だったのである。
第一章 『神秘哲学』詩人哲学者の誕生 p13