一日一文 365日

一日一文 349. 吉野 弘「幻・方法」より

ー 雪の日に -

ーーー誠実に
そんなねがいを
どこから手に入れた。

それも すでに
欺くことでしかないのに。

それが不意にわかってしまった雪の
かなしみの上に 新しい雪が ひたひたと
かさなっている。

雪は 一度 世界を包んでしまうと
そのあと 限りなく降りつづけねばならない。
純白をあとからあとからかさねてゆかないと
雪のよごれをかくすことが出来ないのだ。

誠実が みずからを
どうしたら欺かないでいることが出来るか
それが もはや
みずからの手に負えなくなってしまったかのように
雪は今日も降っている。

雪の上に雪が
その上から雪が
たとえようのない重さで
ひたひたと かさねられてゆく。
かさなってゆく。

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Gaju。 管理人
Gaju。管理人suzukiです。 管理運営担当しております。 愛猫たち(東風Cochiと南風Kaji)のときの過ごし方から 日々学ぶ今日この頃です・・・。