事物の認識について、言語の成立について、そして意識それ自身について、どこまでもどこまでも追い詰めてゆくならば、必ずそこに開けてくる事実だ。言語道断なその場所と、私たちのこの日常との間には、切断も遊離もない。今この瞬間が、永遠の「ア」音の、刻々の生成なのだ。
なるほど、わかった、で、それがどうした、と、なお人は言うか。どうもしやしないのだ、世界がかく在り、私たちがかく暮らしているという事実に、全然変わりはないのだ。変わり得る余地があるものといえば、ただひとつ、そう言う君の、その生き方だ。君はまだ、金銭を実在と信じるか、自我を実体と信じるか、執着できるような堅固な何かがこの世にあると信じるか。それだけだ。
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