歴史とは生きた一人一人の喜びと悲しみの集積であるという考えが、批評家の思考の核に揺るぎない確信としてあるように、思われるためだ。
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私も歴史とは、個人の悲しみの実感を通じてこそ、ようやく見えてくるのではないかと思うのだ。この連載は生と死をめぐる文化人の体験に始まり戦争や大災害の惨禍まで、悲しみの実感に即しながら見つめてきた。連載はいったん終えるが、いずれ稿を改め、より広い視野を想定しつつ、人の生と死を考えていきたい。
ー 個人の実感を通じて見える歴史 小林秀雄の歴史観を参照しながら -p107
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