みなもとの泉
「あなたの知によるのではなく、あなたの知をこえていかねばならない。
無知の中に沈んでいきなさい。
そうすれば、わたしは、あなたに、わたしの知を与えよう。
無知は正しい知である。
どこに行くかを知らないことは、どこに行くかを正しく知ることである。
わたしの知は、あなたを、全くの無知にする。」
(M.ルター)
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『マルティン・ルター ―ことばに生きた改革者』を読んだ。
どうしても読みたくなったからである。
何故読みたいと思ったのか、読み終えて今、自分に問うている。
ことばで語り得ないものを、ことばをもって問い、求めて生きているような気がする。
何故読んだのか、その答えはわたしの知り得ないこの先に続くのだろう。
知り得ないことは恵みであると、どこかでそう知っている気がするのは何故か。
何も知ることのできないわたしの中に聞こえてくることばは、すべてを知っている何かによるものなのか。
何故かわたし自身が言葉をを失うときに湧き上がる。
求めていることは求められているものであり、その源はわたしがわたしではないままに確かなわたしである。
「あなたがわたしを必要としているのと同じくらい、わたしもあなたを必要としている。」
ことばに立ちどまり、戸惑う。
戸惑いながら、耳を傾けている。
聴こうとしているのは、あなたの声。わたしの心。
わたしはあなたであり、あなたはわたしであることを、聞こえてくる何かに伝えられている。
だから、求めているのだろう。
わたしを超えてこそわたしは生きるということを、感じているこの心で。
その、ゆく先にあるのはおそらく、
知り得ないはずの、知っているであろう平安である。
しずかな泉に待たれている。
そんないのちを今、生きているように思う。
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photo kazesan