それでも私が勝手に思い描いていた猫像を次々と打ち砕かれたせいで、
猫初心者としてはずいぶんたくましくなれた気がしている。
猫を育てているつもりで、いつの間にか私が猫に育てられていたのだ。
~
本当は外の世界にいたかったのではないか。
もしあのまま死んでしまったとしても。
でもいくら考えてみたところでそれは絶対にわからない。
猫が我が家にやってくるまでの間、
どうやって生きてきたのかがわからないのと同じように。
それはまるで開けたくても開けられない甘い香りの漂う菓子箱のようだなと思う。
私はその箱を後生大事に抱えて、時には猫の匂いづけのように頬ずりしながら生きていく。
他人の目には奇異に映るかもしれないけれど、
たぶんそれはとても幸せなことではないかと思うのだ。
_幻の猫 あとがきにかえて_
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