一日一文 365日

一日一文 271. 稲垣栄洋「生き物の死にざま」より

仰向けになりながら、死を待つセミ。彼らはいったい、何を思うのだろうか。
彼らの目に映るものは何だろう。

澄み切った空だろうか。夏の終わりの入道雲だろうか。それとも、木々から漏れる太陽の光だろうか。

木につかまる力を失ったセミは地面に落ちる。飛ぶ力を失ったセミにできることは、ただ地面にひっくり返っていることだけだ。わずかに残っていた力もやがて失われ、つついても動かなくなる。

そして、その生命は静かに終わりを告げる。死ぬ間際に、セミの複眼はいったい、どんな風景を見るのだろうか。

あれほどうるさかったセミの大合唱も次第に小さくなり、いつしかセミの声もほとんど聞こえなくなってしまった。

気がつけば、まわりにはセミたちのむくろが仰向けになっている。夏ももう終わりだ。
季節は秋に向かおうとしているのである。

_1・空が見えない最期   セミ_




こちらの本は
7/24~おとなおはなし会夜の部~
新コーナー
「お気に入りの一冊 お裾分け」

ご参加くださってます福岡県糸島でお暮しのYoshikoさまよりご紹介いただいた本です。
エピソードは~おとなおはなし会~の方でお読みいただけましたら幸いです。


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Gaju。 管理人
Gaju。管理人suzukiです。 管理運営担当しております。 愛猫たち(東風Cochiと南風Kaji)のときの過ごし方から 日々学ぶ今日この頃です・・・。