「本当に燃やしたいものを、」
おじさんはそう言うと、コホンと咳をした。
「燃やすことができなくてすみません。」
おじさんはその言葉で、プロフェッショナルの枠から、
少しだけこちらにはみ出してくれた。
余計なことを言わないこと、軽口を叩かないことにかけては、
おじさんの右に出る者はいなかったはずなのに。
~
「あなたは悪くない。」
おじさんが言った。
おじさんの声は、今まで聞いた中で一番乾いていた。
乾いて、強くて、あたたかかった。
まるっきり炎みたいだった。もちろん雨なんて、ものともしなかった。
「あなたは悪くないんです。」
私の目から、だらだらと何かが流れていたけれど、
それはきっと涙ではなかった。
ー 燃やす ー p26~
ABOUT ME