時間のある日は、勇気を出して東京堂書店に踏み入った。咲いたばかりの花に触れるように身をかがめ、本の息に耳をすます。眉根のけわしい、足の長い店長さんが、庭師のように本を整えている。
・・・・書店にとって理想的なのは、本が本をよび、本が棚をよび、棚が書店をよぶという構成を作り上げることだ。読者にとってはその逆をたどればいい。書店に入って棚から棚を見ながら本を手に取り、その本がまた本を呼ぶ。限りない世界が身近な空間に出現する。
整然、清潔。朝いちばんの窓に、しんと光がさしていた。
ー 林と、森と ーp5
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