戦争がおわっても混乱は続き、生活の再建はままならなかった。
そうした困難な状況のなかに、意気のいい一人の若い女性がすっくと立って、負けるものかと胸を張る。悔しさを押さえこんで、ほがらかに生きていこうとする。それがこの詩の基本的な構図だ。
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その敗戦国のただなかに、「ブラウスの腕をまくり卑屈な町をのし歩く」若くきれいな女性がいる。そんな女性が存在するというそれだけで、すでに希望があるといってよい。暗い状況に呑みこまれない力強さと潔癖さを備えた若い女性がいるだけで、状況がほんのちょっぴり明るさを増すふうなのだ。しかも、すてきなことに、この女性には気負いがない。
わたしが一番きれいだったとき
わたしはとてもふしあわせ
わたしはとてもとんちんかん
わたしはめっぽうさびしかった
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ー戦争に抵抗する美意識ー 対は(茨木のり子 詩 <わたしが一番きれいだったとき>)
p182
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