文箱 ”言の葉の落とし文”

文箱 “言の葉の落とし文”

「言の葉の落とし文」に寄せて

季節には折々のおもざしがあり、いつのときも、風という使者がその香を運んでくれます。
いのちの声を数多聴き、遠く広く届けゆきながら…、時にじっと佇み、密やかな声なき声をも掬う風。
掬われて、救われるいのち。
この世界は優しくさりげなく、実にあまねく自然に支えられているのですね。

想いを抱くと、風が迎えにきてくれる気がします。
言の葉に想いを託すとき、それはもうすでに、運ばれてゆく先を信頼しているのでしょう。

いにしえの時代に、「落とし文」という風習があったそうです。
そっとしたためた手紙を、敢えて道に落とし、見知らぬ人に拾われて届けられるのを願うという…なんともしおらしいお便りの仕様。

そして、もうひとつの落とし文。
風薫る時節、緑深まる木立の中に、時折くるりと巻かれた木の葉が落ちているようです。
それは、巻紙のように仕立てた葉の中に産卵をし、そのまま地面に落とすという昆虫の業。
葉にくるまれた卵は、やがて孵化して幼虫となり、ゆりかごであったその葉を食べて育つとのこと。
その習性によって命名された昆虫、オトシブミ。
円筒形の巻文のようなそのゆりかごは、次なるいのちへのバトンにも似ているでしょうか。

密やかに想いをしたためる落とし文にも、ゆりかごを作って子のいのちを守るオトシブミにも、そこに込められているのは、きっと“祈り”。
世界中に鏤められている美しい祈りは、どれほどたくさんのいのちを支えていることでしょう。

わたしたちの他愛ない日常にも、微かな想いがそっと湧き、訥々と、こぼれ落ちるように言の葉へと変じゆくときがあります。
ささやかにも、こころからの祈り。

日々の中で内側から溢れる想いを、少しでも言の葉に託してみる。
届け先は風の使者に委ね、素直なこころを詠んでみる。

記されてふみとなったものを拾い上げるのは、いつのことか、誰によるのか…。
宛先のない、言の葉の落とし文。

落としてみた文を、柔らかに照らしてくれる場があるといいな…。

月明かりが注がれるようなその場所に、言の葉をそっと託してみたり…
時には、どなたかのしたためられた文に出逢ったり…

…と、そんなふうに思い描いていましたら、やさしい風に導かれました。

この度、Gaju。に「言の葉の落とし文」という文箱ふばこが生まれます。
使者による運びも思い描き、その扉を開いていただくことにもなりました。

おひとりおひとりの大切な言の葉が温かな巻文となり、願わくば、その想いのバトンが時を超えて渡りゆきますように…

ー Shino ー


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Gaju。 管理人
Gaju。管理人suzukiです。 管理運営担当しております。 愛猫たち(東風Cochiと南風Kaji)のときの過ごし方から 日々学ぶ今日この頃です・・・。