キヨシ君に、おまえは得手勝手な人間やと叱られたけれど、ほんとに得手勝手な人間になれたら、人間ちゅうもんはきらくなもんやな・・・と、ふうちゃんは思った。
いい人ほど勝手な人間になれないから、つらくて苦しいのや、人間が動物とちがうところは、他人の痛みを、自分の痛みのように感じてしまうところなんや。ひょっとすれば、いい人というのは、自分のほかに、どれだけ、自分以外の人間が住んでいるかということで決まるのやないやろかと、ふうちゃんは海を見ているゴロちゃんやキヨシ少年を見て思った。
そう思うと、キヨシ少年もゴロちゃんも、かけがえのない人間に思われた。オジやんはいうにおよばずギッチョンチョンも昭吉くんも、それからギンちゃんも、ろくさんも、桐道さんも、てだのふあ・おきなわ亭にくる人はみんな、かけがえのない人なのだった。そんな人にかこまれて暮らしている自分はほんとうにしあわせなんやなと、ふうちゃんは思った。
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