一日一文 365日

一日一文 274. 志樹逸馬「志樹逸馬詩集」より

ー 芍薬の赤い芽が -

芍薬の赤い芽が のび上がって ひかりを吸いたがり
ぼたんが おおいの炭だわらを破って 青葉をのぞかせる
春は はちきれる力を 生命のことばで表現する

わたしも ともに 歓声をあげる

p160

ー 窓をあけよ -

自分だけのへやに閉じこもっていた人は
窓をあけたとき
そこから吹いて来る風に きっと
痛みを覚えるだろう

しかし
その驚きは 瞬間に 明るさにかわる

次第に カビくさい因習や

じめじめしけた ひとりよがりの欺瞞が
ぬぐわれてゆき
外の広い世界のだれとでも
友だちになれるのだから

p182

ー てがみ -

てがみを書こう
ベットで寝ていてもペンは持てるのだ

神さまへ
妻へ 友人へ 野の花へ
空の雲へ
庭の草木へ そよ風へ
へやに留守をしている オモチャの小犬へ
山へ 海へ

医師や 看護婦さんへ
名も知らぬ人へ
小石へ

ペンをもってじっと考えると
忘られていたものがよみがえってくる
とても親しいと思っていた人が意外に遠く
この地球の裏側にいる人々がかえって近く
自分と切りはなせない存在であったと
気づいたりする

こうして 病室に入り
すべての人から遠ざかった位置におかれてみて

人は はじめて ほんとうのてがみを書けるようになる

p186

ー 死の床に -

近ごろ、自分が死ぬ時、語りかけてもらいたいことばを、よく
考え 文章につづっておけないものかなァ、と思う。

何も心配することはない
おまえは自分の責任をじゅうぶんはたしたのだ
死んでからさきは神様の仕事なのだ
すべてをまかせるがよい
おまえが懸命に生きたように
そのバトンは大切にうけつがれるのだ
おまえはできるだけのことをやった
神様もできるだけのことをしてくださるのだ
最善から最善にうけつがれるのだ
おまえの願いにまさるものを与えうる
神の力を信ずることはいかに幸せなことだ

p212

7/27 親しき友人たちと「志樹逸馬詩集」朗読の夜より


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Gaju。管理人suzukiです。 管理運営担当しております。 愛猫たち(東風Cochiと南風Kaji)のときの過ごし方から 日々学ぶ今日この頃です・・・。