ー 喝くー(かわく)
見やる先で
日射しもぎろつく陽炎になり
かげろうになり、
影もちじんで
骨組みだけの庁舎の残骸で
かげろうになり
行き交じった暮らし、人々の歌、
そこでさざめいた青い思想も
すっかり干からびた
太古の荒れ地のかげろうになり
われらの希い、われらの明日、
人知れず涙した瓦礫の涙
くぐもった憤りも炎天でゆらめいて
かげろうになり、
夜空にいつか散り敷いた
思いのたけの時空の彩り
花火。
そう、そして月、
一つ一つ胸に宿った
小さい願いの星。
すべてが済んだ事のあとの
光の棘に祟られてあるもの
昼夜緑の翅をひろげて
閃光にくらんだ底翡の夏をひずませているもの。
またもへめぐって夏が来て
めくるめく光の闇になり
見やる先の
闇になり。
ー 祈り ーp186
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