一日一文　182. 志樹逸馬「志樹逸馬 詩集」より

ー　手風琴　ー

どうして　こんな音色を出すか
うたわなければならないか
語ろうとしているか
が　わかったとき
わたしの手風琴は鳴らなくなってしまった

創ろうとして　出来ない風を　さがしに
わたしは　また　屋外に出てはたらこう
夜はランプの下で耳をすまそう

よりよい生活をうちたてることが
もっとも　手風琴をいとおしむ道だ
手風琴の沈黙のときさえ
誇りうる人生を
きずくことだ

p224～