一日一文「ミセス・ハリス、パリへ行く」より

一日一文

ハリスおばさんの城は、苦労つづきのしみだらけという風采だったが、それでもハリスおばさんは、自分なりにけなげに、この部屋をかざってきたのだった。

〜

ドレスを戸だなの中につるしておいて、家を留守にして働いているときも、（あそこにあれがあるんだよ）と、いつも思っていられる、帰って戸をあけると、そこには、すてきな手ざわりと、目の保養をさせてくれる自分のドレスが待っている。
そうなったら、どんなにいいだろう。

ポール・ギャリコ
「ミセス・ハリス、パリへ行く」より