車窓でぼんやり外をみていた
まず流れ去る雲というものがあるので、人間は天に親しみを持ちはじめたのではないか?
つまり宇宙の深みに対するかすかな手がかりと暗示。それが今日、木星や土星にまで近づく最初の糸口、出発ではないか?
まず彩のある雲というものがあるので、人間は天人像を描きはじめたのではないか?
つまり人間の女性にはない浮漾性を与えて、より望ましい像を新たに創ったのではないか?
その時、音楽と散華が加わったのではないか?
とんがった岩山があるので人間は祈りを自然に覚えたのではないか?
祈りたい心があって、しかも祈りかねていた時、山の形を自内の掌でつくる。つまり空に向かう心を、地球の岩山に見習ったのではないか?
これらはすべて遠い遠い昔の事で、今、何の根拠もない事だけれど、縦線ばかりでできている地球のしわに、横線ばかりの雲がかかっている時、私の空想したことである。
ほんとはそうではないのか?
ー 第二章 詩とその周辺 ーp71
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