一日一文 365日

一日一文 134. 若松英輔「君の悲しみが美しいから 僕は手紙を書いた」より

見えない涙がある、そういったら君は驚くだろうか。眼に涙があふれるように、
魂が涙に洗われることがある、といったら君はどう思うだろう。今日、手紙を書こうと思ったのは、君と一緒に涙をめぐって、それも見えない魂の涙をめぐって考えてみたいと思ったからなんだ。

悲しみの底にあって、泣き暮らすうちに涙が涸れる。君はそんな経験はないだろうか。
ぼくは、ある。もっとも悲しいと思ったとき、ぼくは泣いてなんかいなかった。もっといえば、そのときは悲しいとすら感じてはいなかった。それまで知っていた悲しみとはまったく別な感情に包まれながら、ある時期、ぼくは生きていた。

強いとは、悲しまないことじゃない、悲しみながらも生きていることなんだ。

君が苦しんでいるのを見るのはつらい。でも、頼もしくもある。君が自分の人生を生き始めているのを感じるからだ。人生の問いが、君を育み、豊かにするのをはっきりと感じる。悩まないで、でも、安心して考えるといい。考えることはけっして君を裏切らない。

一つだけ助言がある。しっかり食べること。ちゃんと寝ること。この二つが考える糧なんだ。食べることは肉体の、寝ることは、君の身体だけでなく、心の糧になる。

ー 見えない涙 ー p91~


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Gaju。管理人suzukiです。 管理運営担当しております。 愛猫たち(東風Cochiと南風Kaji)のときの過ごし方から 日々学ぶ今日この頃です・・・。