一日一文 365日

一日一文 122. 窪田空穂「窪田空穂歌集」より

ー 波の香 ー

小夜中に海にむかへば
いみじくも香ぞうつる、
ほのめきて、むかし、谷間の
蘭の花の露あり、
みだれては、桂の杜の
こぼれ散る木々の下露、
さながらに香をば伝えて
わが袖に浸まむとするかな。

見かへれば、昔恋しき
かなしみは海にもあるか、
潮沫のひとつひとつや
われとわが夢に籠りて
覚されて泣くにも似たる、
波の香の深きが中に。

ー まひる野 ー p15


ABOUT ME
Gaju。 管理人
Gaju。管理人suzukiです。 管理運営担当しております。 愛猫たち(東風Cochiと南風Kaji)のときの過ごし方から 日々学ぶ今日この頃です・・・。